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配偶者居住権って何?ポイントと注意点

令和2年(2020年)4月1日に改正民法が施行されます。

様々な改正点がありますが、新たに「配偶者居住権」という権利が創設されることをご存知でしょうか。これまでは、配偶者に先立たれた場合に残された配偶者の権利が明文化されていませんでした。改正により、どのように変わったのでしょうか。

今回は配偶者居住権について、分かりやすく解説します!

目次[非表示]

  1. 1.配偶者居住権ってなに?

  2. 1.1.配偶者居住権とは

  3. 1.2.どのような場合に取得できるか

  4. 1.3.配偶者居住権の特徴

  5. 2.注意点

  6. 2.1.善管注意義務がある。

  7. 2.2.借地借家法第10条の適用がない

  8. 2.3.自宅の増改築などには承諾が必要

  9. 2.4.原状回復義務がある。

  10. 2.5.建物を売却しようとする時に取引が滞る可能性がある

  11. 3.配偶者居住権が消滅するとき

  12. 3.1.居住建物の所有者による消滅の意思表示

  13. 3.2.死亡

  14. 3.3.期間満了

  15. 4.気になる配偶者居住権の評価額はどうなる?

  16. 5.まとめ


配偶者居住権ってなに?

配偶者居住権とは

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配偶者居住権とは、配偶者が相続開始の時に居住していた相続財産に属する建物について、その居住していた建物の全部につき、無償で使用及び収益をすることができる権利のことです。

どのような場合に取得できるか

被相続人の配偶者が、相続開始時(例:ご主人が亡くなられ、配偶者と娘と息子の三人が相続人となる場合)に被相続人の財産に属した建物に住んでおり、次のいずれかがあれば配偶者居住権を取得できます。

1.遺産分割または遺贈

遺産分割協議、つまり相続人全員で話し合った上で、「お母さんは配偶者居住権を取得して自宅に住んでいていいよ」と決めることで、配偶者居住権を取得します。(新民法1028条1項1号)

また、配偶者居住権は遺言により遺贈することもできます。(新民法1028条1項2号)


※ちなみに、この遺産分割が終了するまでの間の居住権限も、配偶者短期居住権という形で明文化されました。(新民法1037条)

2.家庭裁判所の審判

遺産分割請求を受けた家庭裁判所は、以下の場合に配偶者居住権を取得させる旨の審判をすることができます。(新民法1029条)

共同相続人間に合意がある場合(新民法1029条1号)

②配偶者の申し出があり、配偶者の生活を維持するために特に必要がある場合(新民法1029条2号)

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配偶者居住権の特徴

配偶者居住権の価値は建物の所有権と比べ、低く算定される



配偶者居住権は、譲渡したり承諾なしに第三者に賃貸したりすることができません。(新民法1032条2項、3項)

そのことから、配偶者居住権の価値は、建物の所有権と比べ低く算定されると思われます。

例えば、遺産を相続人間で平等に分けた場合、不動産所有権の価値は大きい為、居住の為に自宅を相続したは良いが、その他の財産は一切相続できないということが考えられます。

その点、配偶者居住権は建物の所有権に比べ価値が低いので、その他の遺産も相続し得るということが挙げられます。

登記請求権がある(第三者に対抗できる)

配偶者居住権は、登記をすることができます(新民法1031条1項)。登記をしていれば、所有者が不動産業者等(第三者)に居住建物を勝手に売却してしまった場合でも、新所有者に対して権利を主張できます(新民法1031条2項)

登記をするには所有権者の協力が必要ですが、登記請求権がありますので、登記請求訴訟を裁判所に申し立てることも可能です。

注意点

善管注意義務がある。

配偶者居住権を取得しても油断してはいけません。配偶者居住権を取得した配偶者には善管注意義務(取引上一般に要求される程度の注意をつくさなければならないという意味で、自己のためにするのと同一の注意義務と異なりそれより重いとされている)があります。つまり、通常の賃貸住宅に住むのと同じ程度に使用には気を付ける必要があるということです。(新民法1032条1項)。 ※通常の必要費を負担する義務もあります(新民法1034条)。

借地借家法第10条の適用がない

配偶者居住権の第三者対抗要件は登記のみです。これは、借地借家法第10条の適用がないことを意味しています。


💡借地借家法第10条とは

借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

自宅の増改築などには承諾が必要

住み慣れたご自宅とはいえ、その所有者は息子と娘です。ですから、建物所有者の承諾なく増改築をしたり、第三者に使用収益させることはできません。配偶者居住権を取得して居住しているご自宅の増改築をする際には、息子と娘(建物所有者)の承諾が必要なのです。(新民法1032条3項)

原状回復義務がある。

配偶者居住権が消滅した場合、原状回復義務が生じます(新民法1035条2項)。つまり、相続開始の状態に戻さなければならないのです。従って、配偶者居住権取得後にした増改築部分を撤去しなくてはならなくなり、場合によっては損害賠償を請求される事態になるかもしれません。

建物を売却しようとする時に取引が滞る可能性がある

配偶者居住権が登記されていると、「負担付き物件」ということになります。抵当権や賃借権が設定されている場合と同様です。例えば、建物を売却しようとした時に登記事項証明書を取得してみたら配偶者居住権が登記されていて、取引が滞るといった場面が考えられます。

配偶者居住権が消滅するとき

​​​​ 配偶者居住権は永遠には続きません。次のいずれかの条件を満たすと消滅してしまいます。

居住建物の所有者による消滅の意思表示

先述した善管注意義務違反、または建物所有者の承諾のない増改築あるいは第三者への居住建物の使用もしくは収益をさせることによって消滅します。とはいえ義務違反をしたら自然に消滅するのではありません。義務違反をして、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示をした時に消滅させることができます(新民法1032条4項)。

死亡

配偶者居住権を取得すれば終身にわたって自宅に住み続けることができます。これは言い換えれば、その配偶者が死亡した時に消滅するということです。

期間満了

配偶者居住権の存続期間は原則として配偶者の終身の間です。ただし、遺産の分割の協議もしくは遺言に「別段の定め」があるとき、または家庭裁判所が遺産の分割の審判において「別段の定め」をしたときは、配偶者居住権の存続期間を一定期間に制限できます(新民法1030条)。

気になる配偶者居住権の評価額はどうなる?

配偶者居住権の金銭的価値をいくらと評価するかによって、遺産の配分方法が変わると思われます。配偶者居住権の資産価値は、ご自宅の築年数や相続開始時の配偶者の年齢によって評価が変わります。その評価額によっては、遺産分割協議に大きく影響するものと思われます。評価額の算定方法について詳しくは、近日中に別の記事でご紹介いたしますので、そちらを是非ご覧ください。


まとめ

以上をまとめます。配偶者居住権は、残された配偶者を保護する新しい権利です。うまく活用すれば、自宅に住み続け、自由になる老後の資金も確保することができますが、注意点もいくつかあります。

まずは法律の専門家に相談をしてから、ご家族の間で話し合いの機会を設けてみてはいかがでしょうか

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