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積水ハウス63億円事件

事件概要

平成29年8月2日、衝撃的な事件が発覚しました!! 日本有数の住宅メーカーである積水ハウス株式会社が 売買代金(63億円!)をだまし取られるという 近年まれにみる不動産詐欺事件です。 どのような案件だったのか? まずは客観的な時系列で整理してみたいと思います。

時系列で事件を整理する


まずは、この事件について、登記簿等の情報から確認できる 情報を時系列でまとめてみましょう。

①4/24 所有権移転請求権仮登記 ⇒元所有者から、千代田区所在の会社(I社)に  売買予約の仮登記、その買主である地位を積水ハウスが  さらに売買予約をする仮登記がされました。  この際に、代金の一部を支払っているでしょう(数億程度?)。 ②6/1  残金決済 登記申請 ⇒①の登記にもとづいて、最終の決済をしたのが  この日とされています。代金は、積水からI社へ  I社から売主へと流れたと考えられます。 ③6/9  登記の却下 ⇒偽造の書類を用いられているとのことで、  登記申請が却下されます。 ④6/24 所有者(海老澤佐妃子)死亡 ⇒そうこうしているうちに、本物の所有者が死亡します。  死の淵にあったという事でしょうか。 ⑤6/26 I社の取締役1名辞任 ⇒直後に、I社の取締役の一人が辞任をします。  時期的に、本件事件を受けての辞任と考えるのが自然です。  一説によると元国会議員のご婦人だとか。 ⑥6/27 I社本店移転(恵比寿に) ⇒所有者から直接売買予約契約をしたとされる  I社がなぜか本店を恵比寿に移します。  これも時期的に本件事件に関連があるでしょう。  なお、もともとの所在は、元衆議院議員の  事務所所在地だそうです。 ⑦7/4  相続登記 ⇒6/24に死亡した所有者について、  相続による所有権移転登記がなされます。  49日も終わらないうちに相続登記をすることは  あまり多くありません。  所有者の相続人は、詐欺事件に気づいていると  考えるのが自然でしょう。 ⑧7/25 積水の仮登記抹消 ⇒I社の売買予約契約の買主になる権利を  積水が買うという契約をしていたのですが  解除します。完全に取得不可と判断したのでしょう。

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典型事案とは大きく異なる手法

本事件は、今までの詐欺事件とは手法が異なります。 特徴的なのは、   被害者が売主から直接購入するのではなく、   中間の会社が「売買予約」をし、   「買主として所有権を取得する権利」を   売買の対象としている点。 以上が最も目立ちます。 なぜそのような手法をとったのか?? 真実は藪の中ですが、 当事務所では以下のような仮説を立てました

仮登記には権利証がいらない!

「仮登記」 権利の保全のために、取引の中で 使用されることも多いこの登記。 実は、仮登記の申請の段階では 登記申請に権利証の添付をしなくてよい ということはあまり知られていません。 つまり、本件でI社への所有権移転請求権仮登記を 設定する際に、売主が登記上必要とされる書類は  ・印鑑証明書(3箇月以内)  ・実印押印の委任状 以上2点だったということです。 この時点では権利証の偽造が必要ないため、 犯人グループにとっては一つ手間が省けるのでしょう。 恐らく犯人グループは   可能性①印鑑カード、印鑑証明、実印を盗難した   可能性②代理にて実印を勝手に登録した       (代理人による印鑑登録は以外に簡単。) のだと考えられます。 本物の印鑑証明が添付されている為、 仮登記も問題なく完了したのではないでしょうか。 そして、仮登記が完了しているがゆえに 本登記の決済時の確認が緩んだと考えられます。 われわれ司法書士の立場からすると、 仮登記が完了しているということは 本物の印鑑証明の提出があったという事であり なりすましでは?という疑いの目を向けづらくなります。


これでいいのか!?不動産取引

私は、自らも詐欺事件に遭遇し、未然に防いだ経験がありますが、 現場で偽造を見破ることは、難しいと言わざるを得ません。

いくつかの幸運にめぐまれただけです。 3Dプリンター等のテクノロジーの進展は 犯罪をより高度化していくでしょう。 よって、ある一定の金額を超えるような取引の場合は  ・事前に司法書士に権利証等の提供をする  ・司法書士はそれらの資料の照会をする  ・必ず売主の自宅内で、事前に面談をする  ・登記に必要な書類以外の書類を要求する 上記のような対応をしていく必要があります。 また、そもそも不動産取引の安全を担保するためには アメリカのエスクロー会社のような 信頼性の高い第三者機関を介在させることが 効果的ではないかと考えますがいかがでしょうか?

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