生前贈与と家族信託ってどっちがいいの?メリット・デメリットを比較
これから、家族で相続対策などに取り組んでいきたい方がよく迷われるポイントとして、「生前贈与とその他の制度との比較」があります。
そこで今回は、生前贈与と家族信託との比較をとおして、各制度のメリット・デメリットなどをお伝えできればと思います。
1.生前贈与は有効な相続対策なのか?
生前贈与とは
生前贈与とは、主に相続税の節税対策を行うために贈与を利用するものです。
生前贈与で元気なうちに次の世代に財産を移転して、自分の相続財産評価を減らすことができるので、相続税対策として効果があります。また、相続した人が相続税を納税する際に困らないように、事前に納税資金として渡しておいたり、認知症による財産凍結対策という面から見ても、非常に効果的な相続対策です。
メリット・デメリット
贈与税の非課税枠や特例(子や孫の住宅取得資金等の贈与、子や孫の教育費の贈与など)が多数用意されており、現金などの流動資産であれば非課税で財産を移転できるケースが多いところが魅力です。
一方で、財産の多くを不動産が占める場合はどうでしょうか。不動産の評価額は、通常実際の取引額よりも低い評価となりますので、同額の現金を贈与することに比べて贈与税の負担は小さいのですが、子世代が不動産の贈与を受ける場合には不動産取得税が課税されたり、相続時に比べ登記の登録免許税が高額になるため、諸費用の負担が大きくなりがちです。
【2024年の税制改正に注意】 2024年1月から、亡くなる前の贈与を相続財産に加えて相続税を計算する期間が、それまでの3年から7年へ段階的に延長されました。「毎年少しずつ贈与する」対策は、以前より早く始める必要があります。同じ改正で、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が設けられ、こちらを選ぶ方も増えています。どちらが合うかは、税理士と一緒に確認することをおすすめします。
2.家族信託との違いはどうか?
家族信託のイメージ
家族信託は、財産にまつわる権利の中で「財産を管理、運用、処分する権利」だけを所有権から切り離し、これらの権利を子などに移すことができます。親には「財産権(財産から利益を受ける権利)」が残ります。「財産を管理、運用、処分する権利」と「財産権」とを切り離し、前者だけを子に渡すイメージです。
メリット・デメリット
親が認知症等になっても、子が預貯金を下ろしたり、不動産の処分ができるようになります。贈与税や不動産取得税などの税金をかけずに名義を変えられるので、認知症対策に有効です。判断能力が低下した親が、悪意のある第三者に財産を詐取されたりするリスクを避けられるのも魅力です。
しかし、節税という観点で見ると、家族信託には相続税の節税効果はありません。家族信託では「委託者=所有者」という考え方ですので、税務上の財産権は親に残り、相続が発生して財産の承継が起こると、そのときに相続税が課税されます。
ただ、相続税は基礎控除も大きいので、そもそも相続税が課税されないご家庭が多いのも事実です。ですので、ご自身の家庭で相続税がかかるのか、かかる場合はいくらぐらいかかるのかを明らかにしたうえで、対策を検討することも重要です(当事務所では、提携する税理士と一緒に試算を承っています)。
3.結局どっちがいいの?
生前贈与がいい場合
生前贈与は、所有権そのものが親から子に移転します。言い換えれば「財産を管理、運用、処分する権利」と「財産権」の両方が子へ移転することになります。生前贈与された財産は、完全に子の所有物となるため、自分のためにも使用できます(家族信託では、信託された財産はあくまで「親の利益のため」に管理する必要があります)。
ですので、生前に財産を移すことで相続財産を圧縮する節税対策を目的とする場合や、贈与を受ける人がすぐに自分のために財産を使いたい場合には、生前贈与が有効です。
注意しなければならないのは、贈与税や不動産取得税などが多額になるケースや、例えば相続人が複数いる場合に、生前の贈与が不公平感を生み、相続争いに発展してしまうケースなどです。
家族信託がいい場合
親が認知症になったとしても、影響を受けずに預金を下ろせるようにしたい、または実家を売れるようにしておきたい場合には、家族信託が有効です。贈与税や不動産取得税などの税金の負担がないことも魅力です。
特に財産に不動産がある場合、不動産は高額の資産であることが多いため、子どもに生前贈与すると多額の贈与税がかかってしまうことがほとんどです。そのため、相続税の節税のみを目的とするケースでない限り、家族信託を選択されるほうが有効と言えます。
注意が必要なのは、贈与と異なり「長期の運用に耐えることができる家族信託の仕組み」をしっかりと組む必要があるため、専門家への相談が必須になるということです。
4.その他の相続対策
生命保険の非課税枠
相続税のかかる契約形態の死亡保険金の場合は、「500万円×法定相続人の数」までは非課税で現金を受け取ることができます。つまり、例えば妻と子2人が相続人の場合には、1,500万円までは税金がかかりません。
また、死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるので、受取人は遺産分割などを必要とせずに、財産の移転を受けることができます。
教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の特例
子や孫の教育資金や、結婚・子育て資金を一括で贈与する場合の非課税の特例があります。使い道と期限が決まっている制度なので、利用の際は最新の税制を税理士と確認してください。なお、以前あった「ジュニアNISA」は2023年末で新規の投資が終了しています。
5.まとめ
生前贈与にも家族信託にも、長所・短所があります。ここまでお読みいただいた方はお気づきかもしれませんが、どれか一つの制度を利用するのではなく、様々な制度を複合的に利用することは有効です。
例えば、預貯金の一部を子と孫に生前贈与、預貯金の一部を生命保険、収益不動産は家族信託して、自宅は売却の予定がないので遺言でケアして……というようにです。
それを考えるためには、今のまま何もしなかった場合の法律的なリスクや経済的な負担を正しく予測して、あらゆる制度の複合的な運用を考えることが重要です。例えば、相続税対策ひとつとっても、二次相続まで見据えた場合にどうか、そもそも税金だけケアすれば良いのか、を検討する必要があります。また、現状で共有関係になっている不動産を放置することでどうなるか、遺言が作成されていないことで将来的にどんなことが起こり得るかなど、現状の問題点にも目を向けなければなりません。
それらの絡み合う事実に対してリスクを予測し、様々な制度を駆使して、複合的な対策を考えることが、司法書士リーガル・コンサルティング&パートナーの専門家としての役割です。そして、それを「わかりやすく伝えること」も「親身になって寄り添うこと」も、私たちが大切にしていることです。
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