top of page

「認知症で親の口座が凍結!?」家族でできる対策5選

2 日前
読了時間: 8分

認知症の発症などで預金口座の名義人が適切な判断能力を失ってしまうと、金融機関はトラブル回避のために口座を凍結することがあります。


三井住友信託銀行の調査によると、認知症により凍結してしまう可能性のある資産は、2020年時点で255兆円あり、その後20年間でおよそ1.4倍にまで膨らむと推計されています(出典:三井住友信託銀行「調査月報」)。認知症の治療薬の開発は進んでいますが、高齢者の財産管理に注意が必要な状況は、当面変わりそうにありません。


認知症であなたの親の口座が凍結されると、「年金口座が凍結され、生活費が引き出せない」「定期預金口座が凍結され、医療費・介護費などの予備資産が引き出せない」などの問題が起きてしまいます。そんなことにならないために、口座の凍結を回避する5つの方法について解説します。


1.どんなときに口座は凍結されるのか?

金融機関は口座名義人の判断能力が低下してしまった場合、主に次のような理由で口座名義人の口座を凍結させます。


  • 親族による使い込みなどの相続トラブルを防ぐため

  • 口座名義人が詐欺、口座の不正使用などの犯罪に巻き込まれるリスクを防ぐため


金融機関が「判断能力の低下」を認めるのは、「口座名義人が窓口で手続きできない」「氏名や生年月日を言えない」「直筆で署名できない」場合だと言われています。それでは、実際にどのような場面で口座凍結の判断をするのでしょうか。


1-1.家族が本人の認知症のことで銀行に相談した

「暗証番号を忘れた」「通帳やキャッシュカードを紛失した」。このような状況では金融機関の窓口に行かなければなりません。その際に、口座名義人の認知症について相談してしまう方が意外と多いため、口座が凍結されているようです。


金融機関窓口の方は、その情報を受けて口座名義人の意思確認を行います。その際に判断能力の低下を認めた場合は、口座を凍結し、成年後見の利用を促します。また、口座名義人が認知症となった場合に、他の親族の預金の使い込みを心配して、親族の誰かが金融機関に相談し、凍結してもらうというケースもあります。


1-2.本人が窓口で手続きした際に判断能力の低下が発覚した

定期預金などを解約して大きな金額を引き出そうとする場合、本人が金融機関窓口で手続きをする必要があります。その手続きの中には、本人確認および意思の確認を含みますので、窓口でのやりとりでスムーズに受け答えできないなどの場合には、金融機関窓口の判断で口座が凍結されます。


1-3.不審な引き出しが繰り返され、本人に連絡が来た際に判断能力の低下を知られた

本人がATMなどで暗証番号を何度も間違えたり、他の親族などによって不審な引き出しが繰り返された場合に、金融機関から本人に対して確認が入ることがあります。その質疑応答の際、口座名義人本人の判断能力の低下が発覚し、口座を凍結することがあります。


2.家族でできる対策5選

2-1.キャッシュカードを事前に預かる

口座名義人本人のキャッシュカードを預かり、暗証番号を知っておけば、事実上口座からお金を引き出すことができます。その場合、本人が関与する機会が減ることで、金融機関に認知症が発覚せず凍結対策になります。本人のための出費が明白であれば、トラブルになる可能性も低いといえます。


一方で、やはり正規の手続きではない以上はリスクもあります。例えば、そのような状況でキャッシュカードを紛失・破損してしまえば何もできなくなってしまいます。また、引き出したお金の使い道を全て明確にしておくのは容易ではありません。使途不明金があると、将来的な相続で相続人間のトラブルになってしまう可能性が高くなります。


【ワンポイント解説】 手軽に実行できるという意味ではメリットがありますが、このような事実上の対策は、急場しのぎと考えたほうが良さそうです。


2-2.金融機関の代理人制度を利用する

現在では多くの金融機関が「代理人カード」を発行しています。金融機関によってサービスの内容は異なりますが、本人以外の代理人によって預金を引き出すための、代理人用のキャッシュカードです。このサービスは、正規のサービスであり、複数枚の代理人カードが発行できる場合も多いため、本人に替わって口座を管理する利便性に優れています。


しかし、代理人カードの利用はATMでの引き出しに限られている場合が大半ですので、定期預金の解約などには対応していません。また、この代理人カードは原則、本人の意思能力が低下したあとは利用ができなくなりますので、やはり口座凍結対策として万全だとはいえません。


【ワンポイント解説】 代理人カードはできれば発行しておいたほうが良いですが、対策を万全にするには他の対策ともセットで考えるべきだといえます。


2-3.生前贈与

生前贈与は、本人の意思能力が十分なうちに財産を贈与する方法です。贈与したあとは、財産に関する権利が移転するため、以後は本人の意思能力にかかわらず資産凍結という問題になりません。金銭では、年間110万円までの贈与が非課税でできたり、住宅取得資金等の贈与の特例、教育費の贈与の特例など、効率よく贈与するための特例が多数整備されています。


一方で、難点もあります。税制の特例を利用するためには、税務調査に対する準備が不可欠です。例えば、その都度贈与契約書を作成したり、贈与税申告をすることが必要になります。それから、自分の生活の面倒を見てもらうためのお金として贈与したのに、贈与を受けた人が「他のことに全部使ってなくなってしまった!」というトラブルも考えられます。


また経済的に見ても、贈与額が多額になったり不動産を贈与の対象とする場合を考えると、高額な贈与税課税がされる可能性が高く、合理的とはいえないことが多いといえます。


【ワンポイント解説】 本人がまだお元気で対策の緊急性があまり高くなく、贈与の対象が金銭である場合には、一定の効果を発揮する方法です。ただし、2024年1月の税制改正で、亡くなる前の贈与を相続財産に加える期間が、それまでの3年から7年へ段階的に延長されました。「毎年少しずつ贈与する」対策は、以前より早く始める必要があります。同じ改正で、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が設けられ、こちらを選ぶ方も増えています。どちらが合うかは、税理士と一緒に確認することをおすすめします。


2-4.任意後見制度の利用

成年後見制度のデメリットが様々な場面で指摘されていますが、特に指摘されているのは法定後見に関するものです。成年後見には、法定後見のほかに任意後見という仕組みもあり、検討の余地があります。


任意後見制度とは、本人にまだ判断能力が十分にあるうちに、「信頼できる家族などとの間で、財産管理や身上保護を任せるための契約」です。本人の判断能力が著しく低下した段階で、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任の申立てをすると、任意後見が始まります。


そして任意後見が開始される前までは「財産管理委任契約」をしておき、判断能力が低下する前から低下後までの両方をカバーする、いわゆる移行型任意後見契約という方法があります。この方法ですと、任意後見が開始されてからであれば、後見人が口座名義人に代わって預金を管理できます。しかし、『任意後見開始前の財産管理の受任者という立場』で本人に代わって手続きをすることを、認めている金融機関は少ないというのが実情です。


【ワンポイント解説】 任意後見は万が一判断能力が低下したときのための『予備的な手段』として活用できるので、非常におすすめです。一方で、利用の判断には高い専門性が要求されるため、必ず専門家への相談のもと行っていただきたいです。


2-5.家族信託

家族信託は、信託契約によって財産を託された人が、あくまで”本人のため”に契約で定めた方法に従って財産を管理・処分できる契約です。信託された財産については本人の判断能力に関わらず、家族が代わって管理できます。信託財産を管理するための口座を改めて設けるので、凍結という問題になりません。


家族で最も柔軟に財産管理をすることができる方法で、金銭の他に株などの有価証券や不動産も信託することが可能なので、資産の凍結対策において高い効果を発揮します。一方で、信託口座を年金の受け取り口座にできないなどの制限があるので、別途追加で金銭を信託する必要があります。また、財産を任せられた人には強い権限が発生するので、トラブルにならないためにも家族全員が良好な関係であることが重要です。


【ワンポイント解説】 近年では家族信託の利用を後押しするために金融機関の取り扱いも整備されてきており、『信頼して財産を任せられる人』がいる場合には強くおすすめすることができます。ただこちらも、利用の判断や家族信託の設計には高い専門性が要求されますので、専門家への相談のもと行ってください。


3.最終手段は金融機関に相談?

全国銀行協会は2021年2月18日、判断能力が低下している預金者本人に代わって、医療費など本人の利益が明らかな使途について親族が代わりに引き出せるとの考え方を示し、認知症の方が持つ預金の引き出しに関する指針を正式に発表しています(出典:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」)。


ただし、この指針はあくまで「後見制度の利用が原則で、例外的に対応する」という考え方です。どこまで応じてもらえるかは金融機関ごとの判断になりますので、これを当てにした対策はおすすめできません。


4.まとめ

家族でできる資産凍結対策は5つです。


  • キャッシュカードを預かる

  • 金融機関の代理人カードの利用

  • 生前贈与

  • 任意後見

  • 家族信託


しかし、これらの制度には必ずそれぞれ良い面と悪い面があり、利用は慎重に検討する必要があります。一人で判断せずに、まずは専門家に相談してみることがおすすめです。


当事務所では、初回のご相談を1時間・無料でお受けしています(ご来所またはオンライン)。親のことを、ご家族からご相談いただくこともできます。相談を予約する

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。

司法書士リーガル・コンサルティング&パートナー

〒160-0004 東京都新宿区四谷3丁目13番地4 亜細亜観光ビル8階

東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目」駅 1番出口 徒歩3分

TEL 03-6273-1583(受付時間 平日 8:30〜17:30/時間外はコールセンターで承ります)

代表司法書士 堀内貴敬/東京司法書士会所属 第4881号

© 2026 司法書士リーガル・コンサルティング&パートナー

bottom of page